
ごあいさつ
●実行委員長挨拶
第四十九回菁々祭『漢度良好』にお越しの皆さんこんにちは。実行委員長の秋元です。
突然ですが、菁々祭において一番必要なものは何でしょうか。お金? 熱意? 発想? 時間? それらは確かに必要なものではありますが、“一番”ではありません。では何か――それは『仲間』です。
幸いにも東大寺学園は仲間に恵まれました。この菁々祭という大きなイベントは個々人の力では到底為し得ないことです。たくさんの人々――東大寺学園生に限りません。先生方、近隣住民の方々、そして来場してくださった皆様。本当に多方面の、そして多くの方々の理解であり、協力であり、応援によってやっと運営することができています。
私達には自信があります。
それはこの菁々祭がとても楽しいということです。この二日の間、東大寺学園の敷地内には私達が用意した楽しさがいたるところに転がっています。それを余すところ無く味わい尽くしてください。
「楽しかったよ」
この一言が誰よりも熱い夏を過ごした東大寺学園生への最高の褒め言葉です。生徒一同今か今かと待ち構えておりますので、よろしくお願いします。
それでは、菁々祭、心ゆくまでご堪能ください。
第四十九回菁々祭実行委員長 秋元 正圭
●学校長挨拶
今年の菁々祭のテーマ「漢度良好」の意味するものは、男子校ならではの感度(視
点)を上げ、熱意をもって最高の文化祭を創りあげるということのようだ。
学園正面の転心殿には華厳経如心偈の一部が刻まれている。
「諸佛悉了知 一切従心轉 若能如是解 彼人見真佛」
あらゆる価値観や感性は、その人の心の持ち方によって、いろんなものに変現
していくことに気付いたとき、その人は真実を見ることができるという意味のよ
うだ。
しかし世の中は、「損か得か」「好きか嫌いか」「短期利潤が第一」で動いている
ように見えて仕方がない。好きなものが集まり、その集団が得をするような視点
でしか、ものを観なくなっているようだ。そして、自分の意見を通すため、自ら
の心を汚すような駆け引きをする。そんなことに囚われないでおおらかで心自在
に行きたいものだ。
学校紹介DVDのナレーションに「自分のことだけでなく、世の中のことも考
えて・・・」とある、私は気になっている。「自分のことだけでなく」はカットし
て、「自分以外のことを」を付け加えると、多くの方は違和感を持つのだろうか。「他
の人のことを、世の中のことを、社会のことを考えて・・・」そのような漢度を
高めほしいものだ。
一昨年、網膜剥離の手術をしたとき、眼の硝子体液は15日間ぐらいで新しいモ
ノに入れ替 わることを体験した。私たちの体は、細胞レベルでは1ヶ月、
原子レベルでは1年間で新しいモノに入れ替わり、維持されているらしい。自分
に固有の、しかも普遍のモノと思い込んでいた自分の肉体の源が、実は次から次
へと流動しているということだ。そのことは、生きとし生けるものも、空も海も
大地も、地球上の全てのものが大きな流れの中でつながっているということでは
ないか。私にとっては入院中の衝撃的な発見であった。
およそ 2500 年前、お生まれになったばかりのお釈迦様が七歩あゆんで天と地を
指し、「天上天下唯我独尊」とおっしゃったのは、「すべてが尊く大切にすべき存
在である」という意味を込めての言葉なのかもしれないと、東大寺の国宝「誕生
釈迦佛立像」を観て思った。すべてがつながり、ともに年月を経ている大切な存
在と感じない限り、そのような感度を高めない限り、人間の様々な問題はなかな
か解決できないのではないか。
新しい視点で物事を観つめ、感性を高め深く視ることは、我が学園の教育目標
にもある進取的気性の養成にもつながる。それらのことを大切に積み重ねていこ
うとするいしが本年のテーマには込められているように感じる。
皆様、ご来場いただきましてありがとうございます。1年間をかけて生徒諸君
が準備した「漢度良好」に託した意気込みを心からお楽しみください。